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末梢における免疫細胞の生存制御機構の解明に向けたB細胞の非線形的刺激応答の解析

B細胞は, 集団として多様な抗原受容体(BCR)を発現し, 外敵の侵入に備えています. 一方で、BCRは自己の正常な細胞がもつ抗原に反応してはいけません. この仕組みを免疫寛容と呼びます. これまでに, 骨髄における中枢免疫寛容として, 自己抗原に反応する未熟B細胞がアポトーシスによって除去されることが判明しています. しかし, 脾臓やリンパ節にある自己反応性B細胞の活性化を抑制する「末梢免疫寛容」の機構については, 未だ不明な点が多いです. 末梢免疫寛容を解明する手掛かりとして, 次の2つの現象を解析しました.

S Yasuda, et al., Sci Rep, 2017

<抗原刺激に対する非線形的な刺激応答>
通常, B細胞は抗原濃度に応じて活性化しやすくなることが知られていますが, 微小な抗原刺激ではB細胞がかえって死にやすいことも見出されています. 同じ種類の刺激でも刺激の強さ(抗原濃度)に応じて中→低→高と生存率が変わるのは不思議です. 解析の結果, B細胞の活性化には閾値のような仕組みが存在することが確認できました. またこの閾値は, 抗原と結合したBCRの数ではなく密度によって規定されることが示唆されました.

S Yasuda, et al., Genes Cells, 2018

<IgM型→IgD型へのシフト>
BCRにはIgM型とIgD型があり, B細胞は成熟につれてIgM高発現型からIgD高発現型にシフトします. このシフトの理由は明確になっていません. 解析の結果, IgM型→IgD型へのシフトよって, B細胞が自己免疫反応を防止したり, 細胞の新陳代謝を行っている可能性が示唆されました.


展望として, これらをさらに明らかにするための具体的な実験を提案しました. 本研究は, 自己免疫疾患の新規治療法の開発に繋がります. また, T細胞への応用も十分に期待されます.