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微生物共生系制御に向け, 可制御性の評価と制御システムを開発!

光受容細菌を介した微生物共生系の制御へ向け, 光受容細菌の他の細菌への影響を調べることと(A.Nishida et al., PLoS One, 2018), 共生系の持つ予測不可能性に対応した制御システムを開発しました(A.Nishida et al., CSBio, 2016).

微生物共生系は水素などの有用物質生産, 伝統的な酒造り, 排水処理など様々な場で利用されています. このような共生系を利用したシステムではしばしばトレードオフが発生し, 利益を最大化するために制御することが重要となってきます。しかし, 共生系はどういった入力で制御するのかということのほかに, 微生物共生系が予測不可能性を持つ†という問題があります.

制御入力に関しては, 誘導物質と比べ低コストな光入力によって光受容細菌を活性化し, その活性化を通じて共生系全体を制御することを目指しました. その光受容細菌活性化の他の細菌への影響を調べるために, 多様な光合成細菌が存在する温泉環境中††で制限された光波長を微生物共生系に照射することで特定の光合成細菌を活性化し, その影響を菌叢解析することで調べました. その結果, 光合成細菌のタイプごとに周囲の微生物へどのような影響を及ぼすかが分かりました.

微生物共生系が持つ予測不可能性に対しては, 逐次的に出力をフィードバックすることで対応することとしました. モデル予測制御と非線形カルマンフィルタによる制御システムを構築しました. そしてそのテストとして, 光によってタンパク質(GFP)生産のON-OFFを切り替える光受容細菌を対象に, その内部のタンパク質量を目標値へ追従制御することに成功しました.

これらの知見や要素技術は光受容細菌を介した微生物共生系の制御に役立てることができ, トレードオフを持つシステムに対し特に効果を発揮することが期待されます.


†:カオス振動, ”ゆらぎ”による菌叢の変化, 侵入する順序による菌叢の変化といったことが実際に観測されています.

††:温泉で行った理由は高温なため高度な生物が存在せず, ピュアな微生物共生系となっているためです. 野外で実験を行った理由は, ヒトは1%の微生物しか培養できていないと言われているように培養技術が不十分であり, 多くの微生物への影響が見たかったため天然の開放系で実験しました.